最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2012.05.21

Vol.50 | ショコラ・ド・パック(復活祭のチョコレート)について

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フランスの春は、夏時間とパック(復活祭)と共にやってくる。
パックは、イエス・キリストが処刑後の三日目に復活したのを記念する祝祭日。キリスト教の世界では、ノエル(クリスマス)よりも重要視されている祝祭だ。
移動祝祭日で、パックの日付は、“春分後最初の満月の次の日曜日”。今年は4月8日に当たる。
パックは宗教的な行事だが、同時に食いしん坊な行事でもある。ショコラ・ド・パック(復活祭のチョコレート)があるからだ。
一年中ショコラを食べているフランス人だが、その消費量がグンとアップするのは、ノエルとパック。ノエルは、ボンボン・オ・ショコラの箱詰め、と言った、オーソドックスなショコラが主流だが、パックは違う。パックならではのモチーフのオブジェ・ショコラが街中を覆うのだ。トップクラスのショコラトゥリーやパティスリーだけでなく、スーパーも特別コーナーを設置してパックのショコラを販売。パティスリーなどでも、通常商品を一時販売中止にしてパックのショコラを並べている。文字通り、街中がパック・ショコラに埋まる。

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ショコラ・ド・パックの基本は卵型。生産性を表す卵は復活のシンボル。アメリカでも、カラフルな色をつけたイースター・エッグを庭などに隠して探すイベントが開かれているが、食いしん坊なフランス人は探す間もなく食べてしまう。

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卵の他、多産のシンボルである雌鶏もショコラ・ド・パックの定番モチーフ。さらに教会の鐘型、そして同じ時期に当たるエイプリル・フールのモチーフである魚型のショコラも登場する。ちなみに、エイプリル・フールはフランス語で、”ポワソン・ダヴリル(4月の魚)“と呼ばれる。
今年のショコラ・ド・パックを見てみよう。
ノエルのビュッシュはどちらかというとパティシエが主役だが、パックはやはりショコラティエたちがこぞって腕をふるう。
と言うことでまずはトップショコラティエたちの作品から。

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「ジャン=ポール・エヴァン」
毎年チャーミングで驚きあふれるフォルムのパック・ド・ショコラを提案するエヴァン氏。
シマウマならぬシマメンドリ、キョロッと目を覗かせる卵、たくさんの亀が蓋になった卵、魚や亀をぎっしり詰めた魚型。
エヴァン氏ならではの個性豊かな作品は、毎年ショーウィンドーを印象的ににぎわせている。 http://www.jphevin.com

「パトリック・ロジェ」
ショコラティエであると同時に彫刻家でもある鬼才ショコラティエ。
今年のパックにはオレンジや黄色、白で華やかな模様を手描きで散らしたシンプルながらデザイン性たっぷりの美しい卵。額装して飾ってあげたいような作品だ。
http://www.patrickroger.com/jp/index.php

「ジャン=シャルル・ロシュー」
普段からオブジェ・ショコラを得意とするロシュー氏は、春の自然界をテーマにした箱庭的ショコラ・オブジェを発表。卵に加えてカタツムリやカエルが織りなす、甘く美しい自然を鑑賞し、味わえる。
http://www.jcrochoux.com/fr

「ジャック・ジュナン」
卵やめんどりの型の内側に彩色を施した、アート感覚にあふれたカラフルなショコラ。店にたくさん並ぶ様子はまるで展覧会の雰囲気。
http://jacquesgenin.fr/

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続いてショコラも高評価のパティスリーの作品群。

「ピエール・エルメ」
6種のショコラ・ド・パックから、“テオブロマ-自然の兆しのもとで”。今シーズンの「ピエール・エルメ」のテーマは“自然“だが、それにちなんだ作品。繊細なつたの葉をまとった美しい卵はアートだ。
http://www.pierreherme.com/





「サダハル・アオキ・パリ」
パティスリーの名声だけでなくショコラトゥリーとしての評価もウナギ登りの「サダハル・アオキ・パリ」。チャーミングなりボンをまとった清楚で美しい卵やめんどりは、青木氏ならではの抹茶味でも展開。
http://www.sadaharuaoki.com/

「ユーゴ&ヴィクトー」
斬新なフォルムと際立った味の感性が魅力のプジェ氏のお菓子やショコラ。パックには帽子をかぶった卵型。”ガヴロッシュ“と呼ばれる、パリのはしっこい浮浪児をモデルにした作品だ。他にタイ焼きを思い起こさせる魚型なども。
http://hugovictor.com/

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コンフィズリーのパック商品もキュートなものが目白押し。

「ア・ラ・メール・ド・ファミーユ」
数年来ショコラにグンと力を入れている老舗コンフィズリーは、卵型をベースにしたかわいいお顔のめんどりたち。ファンタジーとかわいらしさあふれるコンフィズリーらしい作品だ。
http://www.lameredefamille.com/#/home/





「マゼ」
パリの南、モンタルジの名門コンフィズリー「マゼ」が3月パリのマレ地区に新しい店をオープン。そこに並ぶのはカラフルな花をあしらった、実にラブリーな卵やめんどり。春らしさ満載のラブリーなショコラ・ド・パック。
http://www.mazetconfiseur.com/index.php/les-confiseries-mazet.html
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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