最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2011.10.17

Vol.43 | パリの新しいランチスポット「ボコ」について

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感度の高いパリジャンが好むランチの形態は、高級感やヘルシーさを謳ったサンドウィッチショップやビオのサロン・ド・テ、料理教室で作って&食べて。そんな高感度ランチに、また一つ新たな形態が加わった。コンセプトは、”ボーカル(保存用瓶)“だ。
5月12日に、オペラ座通りの中ほどにオープンした「ボコ」。ボーカル(Bocal)を複数形にするとボコ(Bocaux)。その発音をBocoと当て字で表記した。
名前の通り、この店の主役はボーカル。前菜、主菜、デザートが、ボーカルに入れられてサーヴィスされている。

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まず注目したいのは、そのレシピを担当した面々。料理は、アンヌ=ソフィー・ピック(3つ星)、ジル・グジョン(3つ星)、エマニュエル・ルノー(2つ星)。デザートは、クリストフ・ミシャラク(パティスリー・ワールドカップ優勝)、フレデリック・ボウ(ヴァローナショコラ学校ディレクター)。そして、高名なTV料理レポーターで料理の造詣が深いヴァンサン・フェルニオも、料理とデザートにレシピを提供している。ちなみに、ヴァンサン・フェルニオと弟のシモン・フェルニオがこの店のオーナーだ。フランストップクラスの料理人とパティシエの才能を、15ユーロ程度という手頃な値段で楽しめるのがポイント。また、そのほとんどがパリ以外で活躍中。グルメなパリジャンにとっては、なかなか行けない場所の実力派料理人の味をパリでつまみ食いできる、というのも魅力的だ。

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次に注目したいのは、その食材がほぼ100%ビオ製品、という点。ご存知の通り、昨今のパリの食生活は着実にビオ化している。ビオを謳ったサロン・ド・テの数の多さを見ても明らかだ。ビオ食材を使ったレシピ提案、というのは、参加シェフたちにとっても日頃と違った取り組みで、皆、面白がっていろいろなレシピを考案したという。
レシピは、3つ星レストラン並みの厨房設備のない「ボコ」のアトリエの料理人たちが実現しやすいよう、技術面ではできるだけ簡単に仕立てている。

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整然とボーカルが並ぶ商品棚。その中身を見てみよう。
“グリーンピースのヴルーテ”、“西洋わさびのロワイヤル”、“キノア”、“柑橘”、“ハーブのサラダ”、“仔牛のコンフィ”、“プルーンのチャツネ”、“ジャガイモのムースリーヌ”、“野菜のコンフィとフルーツのタジン”、“小麦のスムール”、“農家風鶏のブランケット”、“チョコレートのミ・キュイとカフェ・オ・レ”、“マンゴー&パッションのチーズケーキ”、、、、。
どれもが、きちんと“料理”されていて、本格的。ファスト・フード店と言うよりは、ボーカルをテーマにしたビストロと言えよう。温製料理は、スチームオーブンで加熱して熱々を提供している。
テイクアウトも可。テイクアウト時にボーカル代1ユーロが加算されるが、ボーカルを返却すると戻ってくる仕組みだ。

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「サラダやキッシュ、サンドウィッチに飽きてしまったパリジャンに、より料理感がありフランスの伝統を感じられるランチを提供したい、と考えたところ、ボーカルに行きつきました。ボーカルは、リサイクル可能で、皿の必要もない。エコロジー面も意識しました」と、オーナーのシモン・フェルニエ。店の前は、ヴェリブ(パリ市貸出自転車)ステーション。立地までもエコロジーだ。

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ボーカル料理のほか、3種類のクロック・ムッシュとケークやクッキー類も提供。エピスリー・コーナーもあり、地中海沿岸諸国を中心に選んだ、ワイン、ヴィネガー、マヨネーズ、ビスケットなどの食材も充実。もちろんすべてビオ製品だ。
パリの新しいランチスポットで、トップシェフ&シェフパティシエの味を気軽に楽しめる、チャーミングな場所の誕生だ。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

Boco
3 rue Danielle Casanova 75001 Paris
01 42 61 17 67
9時~20時30分(ボーカルが並び始めるのは10時ごろ)
土休
http://www.bocobio.com/
※新規ウィンドウが開きます
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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