最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2011.01.17

Vol.34 | ビュッシュ・ド・ノエル

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11月も後半になると、パリはすっかりノエル(クリスマス)の雰囲気。シャンゼリゼやデパートにはイルミネーションが施され、街はノエルショッピングの人々で賑わう。パティシエ&ブーランジェはビュッシュ・ド・ノエルの仕込みにおおわらわ。これから一年で一番忙しい季節が始まるのだ。そして雑誌には、注目パティスリー&ブーランジュリーの今年のビュッシュが続々と紹介され、人々はそれを見ながら、今年はどのビュッシュでノエルを祝おうかと思案しはじめる。味はもちろん、デザインも秀逸な今年の注目ビュッシュを紹介しよう。
まずは、モンブランで有名な「アンジェリーナ」。テーマはマカロン。ショコラ風味のふんわり生地に乗せられたマカロンデザイン。薄いショコラ製のマカロン型をフォークで割ると、中から、チョコレートのサバイヨン&ヴァニラクリーム&砕いたトンカ豆&フランボワーズのジュレが出てくる。美しい形、カットしやすいデザインが秀逸だ。

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今年3月のオープン以来大注目の「ユゴ&ヴィクトー」からは、ノエルの物語がつまった本をイメージしたデザイン。重厚な装丁を施した本型ビュッシュの中身は、2種類のショコラムース&アーモンドプラリネ&ショコラ生地。ノエルには本を贈ることが多いが、こんな本なら何冊も欲しい!?

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ショコラティエ「アバニコ」からは、流れるようなフォルムが目を引くビュッシュ。カシスを加えたショコラ生地&ヴァニラクリーム&マロンムース。全体をショコラコーティングして、いかにもショコラティエの作品らしいデザインだ。

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贅沢なしつらえが見事な、高級ホテルのビュッシュも見逃せない。 「プラザ・アテネ」は、クラシックなスポーツカーをデザイン。ホテルカラーの真っ赤なデザインで、ヌガティーヌ&パン・ド・ジェーヌ&イチゴのコンポート&スミレのクリーム。タイヤはジャンドゥージャ、バンパーはショコラ。細部のデザインにこだわった、オートクチュール的ビュッシュは、食べるのがもったいないくらいな美しさだ。

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こちらも超高級ホテルの「ル・ムーリス」も、負けてはいない。薄い切り株を立てたデザインが斬新。ミルクショコラ&軽いムース、そしてなんとトロペット・ド・ラ・モールという真っ黒なキノコのレモン風味コンフィを飾った。見た目も味も、強烈なインパクト。こちらはテイクアウトはなく、「ル・ムーリス」内のサロン・ド・テで、12月1日~1月2日まで供される。

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キノコは今年のビュッシュの傾向か?名ブーランジュリー「ル・ブーランジェ・ド・モンジュ」は、切り株型を、薄いショコラでデコラティヴに飾り立てた存在感あるデザイン。そしてその味は、アーモンド生地&ミルクショコラにバナナ&モリーユ茸。モリーユ茸はカシス果汁でマリネさせて、甘い風味にマッチするように仕立てた。

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アイスクリーム製のビュッシュ・グラッセも人気だ。老舗名コンフィズリーの「ラ・メール・ド・ラ・ファミーユ」は、官能的な真っ赤な唇型のデザインが印象的なアイスケーキ。チョコレート&栗のアイスクリームとスポンジ系生地を、薄いショコラでコーティング。たっぷりこってりのノエル食事の締めくくりは、ケーキ系ビュッシュでなくひんやりしたビュッシュ・グラッセを、というフランス人は少なくない。食いしん坊な家なら、普通のビュッシュとビュッシュ・グラッセの2種を食べることもあるという。

これから3週間、フランス人は、雑誌やカタログとにらめっこし、様々な店で様々なビュッシュの味見をし、ノエルの食卓を飾るにふさわしいビュッシュ選びに熱を上げるのだ。
皆さんはどんなビュッシュでノエルを過ごしますか?
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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