最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2010.10.18

Vol.31 | クイニー・アマンについて

フランスの食文化は、とても地方色が濃い。アルザス、プロヴァンス、ノルマンディ、ブルゴーニュ、アキテーヌ。各地方に、その土地自慢の料理やワイン、そしてお菓子やパンが存在する。 お菓子で有名な地方といえば、アルザス、プロヴァンス、ペイ・バスク、そしてブルターニュの名前がまず挙がる。中でもブルターニュは、特産品のバターをふんだんに使った地方菓子が多く、フランス全国でその味わいが評価されている。
フランス北西部一帯を占めるブルターニュは、漁業と酪農が盛んな地方。とても上質なバターが生産され、良質な塩も採れるため、フランスで唯一、バター=有塩バターの地方だ。“バターの王様”と、高い評価を得ているジャン=イヴ・ボーディエ氏も、 この土地でバター作りを行っている。

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そんな自慢のバターをたっぷり使った、 ブルターニュきってのお菓子といえば、 クイニー・アマンだ。ブルターニュ語で “バター菓子”を意味するこのお菓子は、 その名前の通り、バターをたっぷり使う。 発祥の地といわれるブルターニュ最西端で 作られるクイニー・アマンは、粉400g、 バター300g、砂糖300gという配合だ。

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パン生地にたっぷりのバターと砂糖を重ねて、フイタージュのように重ね折りにした生地をゆっくり焼いたお菓子。食べると、バターが染み入った生地と、生地に入りきれなかったバターが口の中にジュワッと広がる。室温で食べてもよいし、軽く温めなおして食べてもよい。

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クイニー・アマンの発祥は、1860年代と言われている。パン生地を失敗してしまったブーランジェが、生地を捨てるのはもったいない、と、砂糖とバターを加えて焼いたらおいしいお菓子が出来た、という説。小麦が不作でバターがたくさん生産された年に、バターが多めのお菓子を作ってみたらおいしく出来た、という説。そのほかにも、いくつかの、クイニー・アマン誕生説があるようだ。

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人気菓子かつ地方のアイデンティティを語ってくれるクイニー・アマン。ブルターニュ地方パティスリー連名は、2000年から、このお菓子の地方コンクールを開催している。

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2009年の優勝者、フレデリック・ジェグ氏に、 クイニー・アマン作りの秘訣を聞いた。 「大切なのは、折り方。パン生地にバターを均一に なじませるのですが、ネトネトした感じになって しまうのはNG。焼く時は、バターが焦げないよう、 気をつけます。私のクイニーの配合は、 粉50%、バター25%、砂糖25%。 バターが少なめですが、その香りはきっちり引き出しています」。 ブルターニュには、クイニー・アマンのほか、卵を加えてしっとり焼き上げるガトー・ブルトン、サブレのようなガレット・ブルトンヌ、プルーンを入れたフランのようなファー・ブルトン、キャラメルといった銘菓がたくさん。お菓子をテーマにフランスを旅するなら、ぜひお勧めしたい地方のひとつだ。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

Frédéric Jégou
170 rue Jean Marie Carer 29300 Baye
02 98 96 80 24
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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