最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2010.07.12

Vol.28 | ラストーのワインイベントについて

ワイン作りが盛んなフランス。北はロワールやアルザス、シャンパーニュから、南はまさに全域で、魅力的なワインが生まれている。そんなフランスでは、ワインにまつわるお祭りがとても盛んだ。初秋の収穫祭、11月の、日本でも有名なボジョレー・ヌーヴォーの解禁やブルゴーニュはボーヌのワインオークション、1月のブルゴーニュのサン・ヴァンサン祭り。
ワインをテーマにした、趣向を凝らした楽しいお祭りは多々あるが、中でもお勧めのお祭りをひとつ紹介したい。ラストーの“エスカパード(遠出)”だ。 リヨンの南からマルセイユの北まで、長く南北に伸びるコート・デュ・ローヌ地域の北限に近いところにある、チャーミングで小さな村、ラストー。

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すぐ近くには、古代ローマの廃墟が残る美しい村、 ヴゾン・ラ・ロメーヌもある。 なだらかなブドウ畑が丘陵となって美しい光景を 作るこのワイン村で、毎年5月の第二日曜日に 行われる“エスカパード”は、大変な人気を誇る ワインイベントだ。

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“遠出”と名づけられたイベントは、ワイン畑の中をのんびり歩く遠足。が、ただの遠足ではない。ワインがテーマである以上、ワインがないと話が始まらない。
全長6キロの行程。スタート地点の村広場で、まずはワイングラスと、首からかけられるワイングラスホルダーをもらう。 いざ歩き始めると、行程のそこここに、ワイン&料理を振舞う場が待っている。

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歩き始めて5分もすると、まずはキリリと冷えた白ワインと突き出しのカナッペ類。のどを潤しカナッペをつまんだら、またテクテクとブドウ畑に囲まれた小道をハイキング。

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続いて、ラストーが誇る天然甘口ワインとフォアグラ&パンデピス。さらに10分ほど歩くと軽めのロゼワインとタルトを並べた屋台、次は重めの赤ワインと温かな料理、また別の赤でチーズをほおばり、最後はまた天然甘口ワインでデザート&コーヒー。最初から最後まで歩けば、一通りのきっちりしたコース料理を食べられる仕組みだ。
各ポイントには3~10種ほどものワイナリーがスタンドを出しており、あれもこれもと、さまざまなワインの味見も楽しい。

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それぞれのポイント、さらに道の途中では、歌、コンサート、お笑いコメディ、羊飼い&羊とロバのパフォーマンスなど、余興もたっぷり用意されている。わずか6キロの行程ではあるが、味見にいそしみ、余興を冷やかし、おしゃべりに没頭していると、あっという間に時間がたって、気づくとスタートしてから3時間、4時間がたっていた、というのが普通だ。
ブドウ畑と山々に囲まれて、大自然の中をほろ酔い気分で歩く遠足、“エスカパード”。今年で11回を迎えるが、参加人数は2500人にものぼり、そのチケット(35ユーロでワイン飲み放題&それぞれのポイントでの料理)は、4月にはもう完売してしまうことが多い。

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同じ趣旨のイベントは、ブルゴーニュやシャンパーニュでも行われていて、いずれも大好評だという。チケットが取りづらいのが難点ではあるが、もし機会があれば、ぜひ参加してみてほしい。フランス人がいかにワインを愛し、友人知人との交流を愛し、お祭りにうつつを抜かすかを、ライヴ感覚で感じられる、とても楽しくおいしいイベントだ。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

http://www.terres-de-lumiere.com/index.html
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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