最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2010.05.17

Vol.26 | 「ユーゴ&ヴィクトール」について

2月末、注目の新パティスリーが誕生した。「ユーゴ&ヴィクトール」だ。
オーナーシェフは、ユーグ・プジェ。ミシュラン3つ星レストラン「ギ・サヴォア」のシェフ・パティシエを務めるなどのキャリアを持つ実力派。30年来の友人と共同経営で自店をオープン。友人が経営面を受け持ち、ユーグ自身は、製作に専念している。

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黒とシルバーを基調にした広々とした店内は、その美しさで目を引く。壁に埋め込んだショーケースや優美なカーブを描くショーケースをあしらった店内は、まさに宝石店の面持ち。

宝石店では、それぞれの商品を1点だけ展示して、オーダー後に裏で商品を包んでお客様に渡す、という売り方をするが、この店も同じ。ショーケースには、各種生菓子がそれぞれ1点ずつ、ガラス越しに印象的に展示されている。お客様は従業員の案内でお菓子を見てまわり、購入するものを決定。オーダーした菓子は裏手のアトリエで包装される。

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このように、お菓子を1点だけプレゼンテーションする、というやり方は、目新しい。
クラシックなパティスリーはもちろん、「ピエール・エルメ」や「パン・デュ・シュクル」をはじめ、コンテンポラリーなイメージを持つパティスリーでも、生菓子は複数ショーケースに並べるている。

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昨年秋にオープンした、巨匠フィリップ・コンチチーニの「パティスリー・デ・レーヴ」が、1点プレゼンテーション様式を採用した最初のパティスリーではないだろうか?今後、このような、宝石店タイプのパティスリーが増えるのかもしれない。
ちなみに、1点プレゼンテーションは生菓子のみ。ヴィエノワズリーやサブレなどは、複数を展示して、ボリュームあるプレゼンテーションをしている。

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お菓子の話に移ろう。
主軸の生菓子は、常に8種のテーマがそろう。ショコラ、キャラメル、バニラ、プラリネの4種は、季節を問わず常に登場する基本の味。加えて、季節の果物が4種。今の時期は、パイナップル、ライチ、コンバヴァ(柑橘の1種)、ブラッドオレンジが並んでいる。

各テーマごとに、3種の作品がラインナップされている。“ユーゴ”は形も味もコンテンポラリーで斬新なお菓子、“ヴィクトール”はタルトやミルフイユなどにアレンジしたクラシックタイプのお菓子、そして“ボンボン”は、半球型をしたガナッシュ入りチョコレート。同じ素材をテーマに、3つのスイーツを披露している。

壁に仕込まれたショーケースに垂直に3つのお菓子を飾り、最下部には、そのテーマのお菓子にあう甘口ワインをセレクトしている。

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この8種の生菓子は全て一人用のプチガトーだが、それと別に、アントルメ(大きな生菓子)も常時5種用意。こちらは、8種のテーマとは関係を持たない、オペラ、グレープフルーツ・タルトなどが並ぶ。

そのほか、ヴィエノワズリー、ボンボン・オ・ショコラ、ギモーヴ、パート・ド・フリュイ、サブレ、ケーク、マカロンなども製作。マカロンは、レモン&バーヴェナ、マンゴー&スパイス、プラリネ&ショウガなど、ユニークな味の組み合わせが魅力的だ。
お菓子にも内装にも、個性が光るセンスを存分に配した「ユーゴ&ヴィクトール」。パリの最先端パティスリーのあり方を感じられる店である。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

Hugo&Victor
40 bd. Raspail 75007 Paris
01 44 39 97 73
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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