最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2010.03.17

Vol.24 | ガレット

新しい年を迎えるか迎えないかのころから、パリ中のブーランジュリーやパティスリー、そしてスーパーマーケットにも顔を出す、ガレット・デ・ロワ。1月6日のキリスト降誕を祝って食べる宗教に関係するお菓子だが、今では、どこの店にも1月後半まで登場し、1月のマストアイテム菓子になっている。

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スタンダードなガレット・デ・ロワは、丸型のフイタージュ生地でアーモンドをたっぷり使ったフランジパーヌを挟んで焼いたものだが、南仏ではフリュイコンフィをにぎやかに飾りオレンジフラワーウォーターを香らせたリング型ブリオッシュが主流。今ではパリも、このプロヴァンス風ガレットを置く店が多い。 プロヴァンス風のガレットが増えてきたと同時に、フイタージュ生地のガレットの味も実に多様化している。ブーランジュリーではオリジナル味のフランジパーヌだけを焼くところが多いが、パティスリーとなると、実に様々の味のガレットが毎年お目見えするようなってきた。

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今年、個人的に心惹かれた新作味は、「ルノートル」と「ダロワイヨ」の2軒の老舗パティスリー。 「ルノートル」は“ガレット・ババ”と名づけた、ババ風ガレット。フイタージュでババの生地を囲み、別添えで生クリーム。ラムの香り高いババなのに、どこまでもガレット。斬新なアイディアとおいしさで、人気を博した。フェーヴは、平和をモチーフにしたメダル型。同じスタイルで7種の柄を用意した。
「ダロワイヨ」の今年の新作は、“ディーヴァ”と名づけたキュートなガレット。ポム・ダムール(リンゴ飴)の味をモチーフに、花を髣髴させる形とポム・ダムール色に仕上げた表面が美しい一品だった。フェーヴは、“Diva”とデザインされたチャーム。

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そのほか、気になった味をいくつかあげてみよう。 「パン・ド・シュクル」は毎年、丸ではなく正方形のガレットを製作。ピスタチオとライム、グリオットを仕込んだフランジパーヌ入り、シナモン風味のリンゴを仕込んだフランジパーヌ入りの2種のフイタージュが看板商品。 「ジャン=ポール・エヴァン」は、ナチュラルとショコラ風味のフイタージュを重ね合わせて、中にはショコラ&ユズを忍ばせたフランジパーヌ。名ショコラティエならではのショコラ味を堪能できた。 7種のガレットを提供した「アルノー・デルモンテル」の一番人気は、塩バターキャラメル入りのフイタージュ。新作のカフェ&ゴマのフイタージュも、個性的な味で注目。

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「ポワラーヌ」は、クリームの入らないフイタージュだけのガレットと、アーモンドではなくノワゼット(ハシバミ)でつくったフランジーパーヌ入りフイタージュの2種。今年のテーマは“樫”。王冠も樫モチーフでフェーヴもどんぐり、樫の葉型に焼いたと小さなパンをウィンドーにたくさん飾り、樫の葉モチーフの王冠型パンも、飾り用に作っていた。 パリ郊外フォンテーヌブローの名パティスリー「フレデリック・カッセル」では、キャラメル風味のリンゴ味のフイタージュが人気だった。

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1月中、あらゆる機会に食べるお菓子なので、フランジパーヌ味だけだとどうしても飽きてしまう。各店、代表菓子の味をガレットにアレンジしたり、様々な味の組み合わせのガレットを提供し、ガレット尽くしの1月を楽しませてくれているのだ。

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さて、毎年恒例のパリ市およびパリ近郊のブーランジュリーによるガレット・デ・ロワのコンクール。 今年の優勝はパリ郊外、アルフォーヴィルの「ミシェル・ファブル」。2位にはパリ11区の「ジェラール・ヤヴル」、3位はパリ16区の「モルガン・ガンティエ」だった。
ガレットの季節もついに終了。次なるイベントは、2月2日のクレープ、そして謝肉祭の主役菓子ドーナツやブーニュなどの揚げ菓子。2月のパティスリーとブーランジュリーのウィンドーをにぎやかに彩る、宗教風物菓子だ。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

Michel Fabre
168 rue Paul Vaillant Couturier 94140 Alfortville
Gerard Yevre
28 bd. Beaumarchai 75011 Paris
Morgan Gantier
2 rue Corot 75016 Paris
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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