最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2009.08.17

Vol.17 | バスクの日本人ショコラティエール

フランス南西部、スペインと国境を接し大西洋に面したバスク地方(正式には、ペイ・バスク地方という)は、フランスにおけるチョコレートの発祥地だ。

カカオがヨーロッパに上陸したのは、16世紀半ば。大航海時代に、フェルナンド・コルテスが南米のアステカ(今のメキシコ)からスペインに持ちこんだ。
17世紀初旬、スペインで迫害されてフランスに逃げ込んできたユダヤ人たちの手で、バスク地方に伝わった。その後、スペイン后妃マリ・テレーズがフランス王ルイ14世と、バスク地方の良港地 サン・ジャン・ド・ルズで結婚式を挙げ、この地方でチョコレートが流行になった。バイヨンヌに多くのショコラトゥリーが誕生し、18世紀にはすでにショコラトゥリー協同組合もあったという。今でも、19世紀創業のショコラトゥリーがいくつか残っている。トップ・ショコラトゥリーとして有名な「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」の創業者ロベール・ランクス氏も、バスク地方の出身だ。

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そんな、バスク地方で、チョコレートを作っている日本人女性がいる。宮下由美子さんだ。

ベルギーとフランスに住み始めてチョコレートに惹かれた。
ショコラティエの国家資格を取得し、昨年10月、バスク地方の玄関都市ビアリッツとバイヨンヌの間にある、アングレットという町にアトリエを構え、「ショコラトゥリー・モレル」を立ち上げた。

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40㎡ほどのアトリエで、一人で製作。

包装や発送もすべて一人で。午前中はアトリエとして利用し、午後はショップとして一般客を迎えている。

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カカオバター100%の上質なチョコレートは、キャラメル入りのタブレット(板チョコレート)が主役。

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ゲランドの塩の花、バスク唐辛子のピーマン・ デスペレットやハチミツ、プラリネ・ノワゼット、バルサミコヴィネガーなどのフランスらしい味のほか、宮下さんの故郷長野から取り寄せる山椒や七味唐辛子、愛知の八丁味噌を仕込んだキャラメルを入れたタブレットもある。柚子や抹茶のキャラメルはホワイトチョコレートで包んでいる。

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キャラメル入りタブレットは全部で16種。
他にプレーンなタブレット類も5種ほど。
すべての種類は、タブレットのほか一粒大のボンボン・オ・ショコラにも仕立てている。

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ピンクと茶を基調としたパッケージも宮下さんのオリジナル。包装のかわいらしさと味のおいしさがあいまって、オープン直後から、地元のラジオやテレビなどのメディアに頻繁に取り上げられている。ビアリッツのデパートでの催事にも声がかかる人気ぶりだ。

上質なチョコレートに、フランスと日本の香りを上品に練りこんだ宮下さんの作品は、ネットでも購入可能。日本へも空輸している。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

ショコラトゥリー・モレル
http://www.chocolat-morel.com
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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