最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2009.03.16

Vol.12 | ノエルの風景

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フランスでは、クリスマスの食卓は、一年で一番重要な食のシーンだ。
日本と逆で、クリスマスは家族で祝い、年末は友達と祝うフランス。クリスマスには、久しぶりに家族全員が揃って食卓を囲んで長い時間をかけて食を楽しむ、という光景が、そこここで見られる。 典型的なクリスマスの食卓を、紹介しよう。

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まずは、シャンパーニュでアペリティフ。祝宴のイメージを持つシャンパーニュは、クリスマスの食卓に欠かせない。
続くアントレは、生牡蠣、スモークサーモン、フォア・グラが主役だ。 この日に生牡蠣を食べるのを常にしているフランス人は実に多く、食料品店や魚屋はもちろん、ブラッスリーなどの店先でも、飛ぶように売れている。1個2個、という単位でなく、最低半ダース、普通で1ダース、という量をフランス人は食べるので、1キロ入りの箱数個、という単位で売れていく。 フォア・グラは、テリーヌで。フォア・グラの産地や田舎の家では、自家製テリーヌを作ることも多いが、忙しいパリではやはり、出来上がったテリーヌを買うのが普通だ。 スモークサーモンもあらゆる種類が、ずらりと売り場に並ぶ。

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ホタテ貝、オマールエビ、イセエビなどの高級甲殻類も、クリスマスの人気食材。普段はめったに食べない高級品だが、このときばかりは、と散財するのだ。 ホタテはカルパッチョやバターソテー。オマールやイセエビもシンプルなバターソテーが主流だが、腕に自慢があれば、エビのミソとクリームをベースにしたソースを添えたりもする。

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肉の主役は、鶏類。中でも、シャポンという去勢鶏が、クリスマスに登場するもっとも人気(かつもっとも高級)の種類。鶏で唯一AOC(原産地統制呼称)を持つブレス鶏にも去勢鶏があり、毎年行われるブレス鶏コンクールで優勝した去勢鶏は、クリスマスに大統領官邸に納められるという。 シンプルにロティして、肉汁で調理した野菜類を添えるのが一般的だ。 そして、フロマージュは、冬の定番、ヴァシュラン・モン・ドール。とろりとクリーミーなフロマージュを、スプーンですくってパンに乗せていただきたい。

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最後は、おなじみビュッシュ・ド・ノエル。高名パティスリーは毎年のように新作を発表。様々な味のビュッシュからこれぞ!というお気に入りを選んで食卓に乗せるのだ。 そして、コニャックなどのブランデーとともに、マロン・グラッセや、フリュイ・コンフィ、ショコラ。 特にマロン・グラッセは、クリスマスのイメージ。この時期にもっとも多く食べられるコンフィズリーだ。

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こうして、家族で過ごす長時間にわたるクリスマスの宴が終了。一週間、体を休めた後は、12月31日に今度は友人知人と集まって、騒がしくも楽しい年末の食卓を囲むのだ。 朝まで騒いだ翌日の1月1日は寝て過ごし、2日からはもう仕事はじめ。 そうこうするうちにもう、ガレット・デ・ロワの季節がやってくる。
ジュワイユー・ノエル エ ボンヌ・フェット!
(メリー・クリスマス、そしてよい年末を!)
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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