最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2008.09.16

Vol.6 | 南仏の薪焼きパン屋さんについて

パン作りにおいて、窯の存在は大切だ。今では、電気で熱を起こす窯がほとんどだが、時折、昔ながらに薪で火をおこしてパンを焼く店を見かける。
南仏プロヴァンス地方の、ごく小さくて風光明媚な村、ラ・カディエール・ダジュールにある「オ・ヴュー・フール」も、今では希少になった、薪で火をおこすブーランジュリーだ。

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“古いかまどで”という名前の通り、この店の石窯ができたのは、1856年。以後、今日に至るまで、薪で窯の火を 起こしてパンを焼いている。
毎朝2時半に火入れ。3~4時間かけて窯を温めてからパンを焼く。窯の奥行きは3メートル。記録に挑戦!と、3メートルの長さのカンパーニュを焼いたこともあるという。

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パンの種類は20ほど。プロヴァンスらしい、オリーヴ、オリーヴオイル、クルミ、イチジク、シリアル、ジバシエなどのパンが自慢。
大ぶりでジューシーなオリーヴの味や、たっぷり含ませたオリーヴオイルのネットリした食感、香ばしいクルミの味など、プロヴァンスの美味が印象的に表現されている。

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リンゴを種にした自家製酵母を使ってセーグル粉を混ぜたルヴァン、3種類用意しているバゲットも売れ筋だ。
バゲットは、いわゆる白粉で焼くタイプ、トラディショナル小麦で焼くタイプ、そして、村外れで栽培している自家製ビオ小麦で作るタイプの3種。石臼で挽いて、年間2トンほどの粉を作っている。

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惣菜パンは、ピザやフガス、ピサラディエール(タマネギ、アンチョビ、オリーヴを乗せたピザ)など、典型的な南仏カラーのものが一通り揃い、パン・オ・ショコラなどのヴィエノワズリーもある。
いずれも、かなり焼き色をつけた、ワイルドな仕上がり。しっかりした歯ごたえや香ばしい匂いに、伝統的な窯で焼くパンならではの個性を感じる。
パティスリーも作っており、シンプルなタルトやエクレールなどが店頭を飾る。ナヴェットやアニスクッキー、ヌガーなど、南仏特産菓子も豊富だ。
フランスの子供たちに食育を行う“味覚週間”にも毎年参加。子供たちと一緒に小麦を刈ったり、パン作りを行い、パンというフランス人にとって非常に大切な食文化の伝統を啓蒙している。

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オーナーは、ブーランジェのアンドレ・トゥール氏と、パティシエのアンドレ・ドゥシーズ氏。
2人のアンドレによる窯焼きブーランジュリーは、村で唯一のブーランジュリーだが、こんなブーランジュリーがあるカディエールの住民は、とても幸せだ。

Information-レポートに出てきたお店などを紹介します。

Au Vieux Four
8 rue Marx Dormay 83740 La Cadiere d’Azur
04 94 90 11 59
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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