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最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-
Date:2008.07.14
Vol.4 | フォションの新作のレポート
1886年創業の「フォション」は、パリを代表する総合食料品店の1つ。「ルノートル」と並ぶ、この分野でもっとも有名な店である。
創業時から、パリのマドレーヌ広場が本拠地。取り扱う製品は、パン、パティスリー、惣菜、果物といったフレッシュ食品から、紅茶、スパイス、ジャム、ハチミツ、パテやフォアグラなどの缶&瓶詰め保存食、ビスケット、ワイン、オリジナル食器などまで、実に幅広い。
老舗高級食料品店としてのイメージを長い間まとってきたが、2004年から、ヴィヴィットなショッキングピンクなどの色を使ったアピール感たっぷりのPR活動を積極的に展開し、同時に商品のコンセプトやパッケージも一新。感度が高く、創造性豊かな食料品店として、新しいラグジュアリーなイメージを作りつつある。
今年の春夏の新作商品を通して、今の「フォション」のスタイルを見てみよう。
惣菜部門で目を引くのは、野菜をたっぷり使ったヘルシー商品。ライトな食事への傾倒という時代の流れを、とことん追及したものだ。
ノワゼットとレモンを効かせたサブレに、ラディッシュ、タマネギ、ニンジン、インゲン、グリーンピース、アスパラガスなどの野菜と、ケシの実をまぶしたマグロを乗せ、ワサビクリームで味付けをした、春色が賑やかに満載された野菜タルト。
スモークサーモンとシブレットのクリームを詰め、表面にはミント風味のグリーンピースクリームをかぶせて、グリーンピースとスモークサーモンを賑やかに飾ったエクレア。
いずれも、ヴィジュアル面の訴求力も強く、野菜の魅力を際立たせている。
菓子部門でも、オリジナルデザイン新作が目を引く。
「フォション」のアイコン的存在になってきた、モード感たっぷりのエクレアの新作は、ペッシュ・ドゥ・ヴィーニュ(果肉が赤い、ひしゃげた形の桃)、アプリコット、ピンクグレープフルーツの3種。春夏らしい味と色の果物をクリームにし、グラサージュの仕上げは、それぞれの果物の色を使った、カムフラージュ風のキュートなデザインに仕上げている。
フレッシュ果物を使わない果物タルト、というコンセプトで作ったサブレは、正方形のシュクレ生地タルトに、ヴァニラ風味のクリームを流し、パッション、ココナッツ、レモンライム、マンゴーなどの果物のコンポートを正方形にして並べたもの。その名も「ルービック・タルト」だ。
お茶部門でも、流行をしっかり反映。
もともと紅茶の名門店として高い評判を得ていたが、緑茶への興味の高まりを敏感にキャッチ。体によい成分がたっぷり入った緑茶に、果物やハーブなどを組み合わせ、“美しい肌”、“アンチエイジング”、“痩身”の3つのテーマに沿った新しいお茶シリーズを発表した。名前は、ボーテ(Beaute)。“美”という意味だが、ボーとテに分けて、綴りをちょっと変えれば(Beau と The)、ボー・テで“美しきお茶”という意味になる。緑茶のイメージを強調した、鮮やかな緑が爽快なパッケージも、従来のお茶のパッケージと一線を画している。
時代の流行を、材料や味の面はもちろん、視覚面においても熱心に追求し、他ブランドとの差別化を上手に計りながらラグジュアリー感を押し出している「フォション」。値段の高さにも関わらず、パリはもちろん世界中で高い評価を得ている理由は、このような創造性の力に負うところが多いだろう。
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加納 雪乃 Yukino Kano
フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。
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