最新パリレポート L'rapport de Paris-リアルなパリの情報をフリーライターの加納さんがお届けします-

Date:2008.06.16

Vol.3 | ミシュラン&トップレストランのパン

有名なレストランガイドブック、ミシュラン。2008年度のフランス版が、3月初旬に発売になった。掲載レストランは3500軒を超え、最高ランクの3つ星を獲得した店は26軒。内1軒は、今年新たに昇格した店で、マルセイユの「ル・プティ・ニース」。地中海料理のコンテンポラリーアレンジが高く評価された。ちなみに、史上初の星つき和食店も誕生した。鉄板焼きをメインとするパリの「あい田」だ。
3つ星クラスになると、料理の内容はもちろん素晴らしいが、それに華を添えるパンの存在にもこだわる店が多い。パリの店をいくつか挙げてみよう。

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昨年3つ星になり、今もっとも旬なレストランのの1軒である「ル・ムーリス」。ここは、MOFブーランジェ、フレデリック・ラロスが経営する「ル・カルティエ・デュ・パン」のパンを利用。ミニサイズのバゲットやカンパーニュ、シリアル、クリなどを用意し、ゲストが好きなパンを選ぶ。
「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」は、シンプルな自家製パンを2種。ミニバゲットとブール型のカンパーニュタイプ。ゲストは特にパンを選ばず、着席後、2種がパン皿に盛られる。「アルページュ」は、ブーランジュリーとのコラボレーションでつくったオリジナルの大きなカンパーニュ。これをテーブルの横でザクザクと無造作に切り分け、パン皿に乗せてくれる。

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地方での注目は、モナコの「ル・ルイ・カンズ」。大きなシャリオにディスプレイされて運ばれてくる自家製パンは10種ほど。一人用のミニサイズからその場でカットする大きなカンパーニュまで、サイズも賑やか。オーソドックスなパン類のほか、エプートル、オリーヴオイル、フガス、ハーブなど、様々な味わいのパンがそろって壮観だ。
ボルドー地方の2つ星「シャトー・コーディヤン・バージュ」のシェフ、ティエリ・マルクスは、パン作りにも熱心で、レストランと別にブーランジュリーも開いているほど。自慢のパン5~6種ほどが乗ったプレートが運ばれ、客席脇でカットしてくれる。
この店は、バターにも注目したい。牛乳の有塩と無塩というオーソドックスな2種のほか、山羊乳バター、そして牛乳を使ったバターの前段階、フロマージュブランのような状態のもの、全部で4種ものバターをサーヴィスしている。素晴らしくおいしい新鮮なパンとバターは、これだけで十分なごちそうになるくらいだ。

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これらの高級店では、テーブルに2種のバターが並ぶのが普通だ。有塩と無塩。産地は、ブルターニュやシャラントのものが主。バターの王様、ボーディエのバターは、全国的に多くの3つ星、2つ星店で見かける。中にはもちろん例外もあり、たとえば「アルページュ」では、シェフの出身地がブルターニュだからだろうか、この地方の特産である有塩バター、しかも塩の割合がかなり強めなもののみをサーヴィス。大きな塊からその場でカットして皿に盛る。
パリの2つ星「ル・サンク」では、バター2種のほかに、トスカーナ産オリーヴオイルもテーブルに置く。この香り高いオイルを楽しむために、と、塩を入れないプレーン味の、キメが柔らかくオイルを吸い込みやすいパンを、通常のパンのほかに特別に提供。通常のパンは、「ブーランジェ・ドゥ・モンジュ」のものを4種類ほど用意している。
「ル・ルイ・カンズ」のように、オリーヴオイルがおいしい地方では、バターのほかにオリーヴオイルもサーヴィスするところが多々見られる。また、フロマージュの時には、ナッツや乾燥果物などのフリュイセックを入れたパンを、別にサーヴィスする店も多い。
極上の料理を楽しめるこのクラスの店は、このように、パンの質やプレゼンテーションも素晴らしい。料理の前に、パンの味見でお腹がいっぱいになってしまうこともしばしば。各店が料理同様誇りに感じているパン。じっくり楽しんでもらいたい。
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加納 雪乃 Yukino Kano

フランスの食文化を専門とする、パリ在住のフリーのライター兼コーディネーター。インターネットでフランスのレストランについての情報を発信し、レストラン選択のアドヴァイスなどを提供。

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