2015.7.13 update
vol.88
定番サンドウィッチ本来の美味しさを提案する “ジャンボン・ブール”
「ジャンボン・ブール、ひとつください!」
パリのパン屋やサンドウィッチショップで、一番耳にする言葉がこれだろう。“ジャンボン・ブール”を直訳すると、“ハム・バター”。つまり、バターを塗ったバゲッドにハムをたっぷり挟んだシンプルなサンドウィッチのことだ。別名を“サンドウィッチ・パリジャン”といい、パリを代表する定番中の定番サンドウィッチ。そんな、パリッ子が大好きなサンドウィッチにフォーカスしたショップが、2014年秋に誕生した。その名も「ジャンボン・ブール」だ。
「定番すぎる故、クオリティーの低い物も多くなってしまったジャンボン・ブール。その本来の美味しさを啓蒙したかった」というのは、店のオーナー、ステファンとロドルフ。ファストフード大流行中のパリ。ハンバーガーやベーグル、ホットドックやケバブといったフランス発祥でないパンフードが躍進中だが、そこに、バゲッドやパン・ド・カンパーニュといったフランスらしいパンを使ったファストフードで一石を投じたい、という思いもあったそうだ。
さて、黒板に書かれたメニューを見てみよう。
主役は言うまでもなく、“ジャンボン・ブール”。店のすぐ近くにある人気ブーランジュリー「ゴスラン」のバゲッドを、常にフレッシュな物を使えるよう、一日何度も買いにいく。バゲッドは、1/2サイズのドゥミ・バゲッドをチョイス。一本を半分にカットするのではなく、あらかじめ半分の長さに成形して焼いたドゥミ・バゲッドを使い、サンドウィッチの両端ともにカリカリ感を楽しめるようにした。
バターは、フランスで一番人気が高く、高級レストランでも頻繁に見かける「ボーディエ」製。“ジャンボン・ブール”には、爽やかな香りがふわりと香る柚子風味バターを使っている。縦に切り込みを入れたバゲッドの下部内側にまんべんなくバターを塗り付け、パリで今大評判の人気ハム“プランス・ド・パリ”のスライスをたっぷりのせて、シソの葉を数枚のせて、出来上がり。
最上の食材を厳選し、伝統に忠実ながら柚子やシソの香りでコンテンポラリーなアクセントを効かせた、店一番のヒット商品だ。
他に、BIOパンの名店「ムーラン・ド・ラ・ヴィエルジュ」のパン・ド・カンパーニュにハムやルッコラ、蜂蜜マスタード、タマネギ、ピクルスを挟んだものや、ブリオッシュタイプのバンズに牛肉ハム、モッツァレラ、マスタード、ビーツのコンフィなどを挟んだサンドウィッチも。豚を食べない国の人々への配慮から、燻製牛肉ハムや、鴨のパストラミなども用意。ミントやシブレットなどのトッピング用ハーブも多種取り揃え、例えばシソの葉が苦手なら、代わりにバジルやコリアンダーなどを入れてもらうなどのオーダーメイド的サンドウィッチも作ってくれる。サンドウィッチは全て、オーダー後に作成してフレッシュ感も大切にしている。
昼は、サンドウィッチを主役に、サラダ、スープ、自家製デザートなどを提案するいわゆるサンドウィッチショップだが、木金土曜の夜は、ワインバー「ジャンボン・バー」として機能。数種類のサンドウィッチをはじめ、ハムや生ハム、サラミなどや各種チーズの持ち合わせ、牛肉&ミモレット入りスコーン、ブラッタチーズ&オリーヴ、ベジョータイベリコハム&キノコ&ナスのピュレをのせたトーストなどのつまみを、ワインと共に提供する。ワインは約120種を揃え、カイピリーニャ、モヒートといったカクテルも10種ほど取り揃える。
シンプルなサンドウィッチの美味しさを、丁寧に上質に提案してくれる「ジャンボン・ブール」。パリに数多あるサンドウィッチショップの中でも最も注目される一軒だ。