2015.3.16 update
vol.84
フランスの名物カーニヴァル
マントンの”レモン祭り”
2月のフランスは、カーニヴァルの時期。復活祭の46日前から前日までの期間は四旬節と呼ばれ、伝統的に、豪華な食事や宴会などが自粛される。この期間、肉や卵の摂取を控えるという敬虔な信者も少なくない。
そして、その四旬節に先立って行う祝宴がカーニヴァルだ。四旬節の節制期間に入る前に、たらふく食べてお祭り騒ぎを行おう、と開催されるカーニヴァル。カーニヴァル特有のお菓子もあるが、これはまた別の機会に話をしよう。
今回は、フランスの名物カーニヴァルの一つ、マントンのレモン祭りを紹介する。
フランス最南東部、目と鼻の先はモナコ、そしてイタリアに続くという海辺の街、マントン。ここは15世紀くらいからレモンの一大産地だったそうだ。20世紀初頭、街のラグジュアリーホテルの庭園で開催されたレモンやオレンジなどの柑橘と花をテーマにした展示会の大成功を受け、1934年から、市が音頭をとり、カーニヴァルと柑橘を掛け合わせたお祭りイベント、“フェット・デュ・シトロン(レモン祭り)”が誕生した。
四旬節に先立つ3週間弱が期間。82回目となる今年は、2月14日〜3月4日に開催。街の目抜き通りの広場には、毎年、高さ数メートルにも及ぶ巨大なオブジェが何体も、レモンとオレンジを使って作り上げられる。その高さは10メートルを超えるものもあり、鮮やかなレモン色とオレンジ色が、陽気で楽しげに輝く。
毎回テーマがかわり、今年は、フランスを代表する作家ジュール・ヴェルヌの、清朝の中国を舞台にした作品“必死の逃亡者”。145トンものレモンとオレンジで、ドラゴンや寺院などの巨大オブジェが制作され、広場に飾られた。海岸通りではパレードも行われ、こちらにも柑橘で作ったオブジェを乗せた山車をはじめ、ダンサー、楽隊たちが練り歩き、紙吹雪を待ちきらしながら、賑やかに沿道の声援に答える。
マントンの市内にはレモンやオレンジの木々が植えられ、真っ青な空とコートダジュールの海の色を背景に鮮やかに輝き、この季節はまだ雨がちで灰色空のパリとは別世界のよう。
街の郊外には柑橘畑が広がり、町中のパティスリーでは、レモンを使ったお菓子の代表、タルト・オ・シトロンがずらりと並ぶ。シュクレ生地にレモンクリームをたっぷり流し、上にメレンゲを乗せて焼き上げるのが定番。メレンゲを乗せないタイプも多いが、レモンの酸味やクリームの濃厚な食感を際立たせるためにも、ふわりとした甘いメレンゲがあるほうがバランスがよいと感じる。
タルトのほか、ケーク・オ・シトロンや、レモンピールのコンフィなど、レモン関連の甘い美味しさに巡りあえるマントン。カーニヴァルの時期に出向き、レモン祭りとレモン菓子を楽しんでみたい。