2014.9.16 update
vol.78
パン作りにも欠かせない 旨味あふれる"ゲランドの塩"
人間が生きるために必要不可欠な食材の一つ、塩。
旨し国フランスでは、塩の質も世界的に評判。イル・ド・レ、ノワールムチエ、カマルグなどいくつかの塩名産地があるが、中でも群を抜いて有名なのは、ゲランド。フランス北西部のペイ・ド・ロワール地方の、太平洋岸に位置する小さいながらも風光明媚な観光地だ。
ここで行われている塩作りは、古代ローマ時代まで起源をさかのぼり、今に至るまで、機械を全く使わず人間の手と自然の力だけで行われている。
日本の田んぼのような形の、約50区画に分かれた塩田を作り、そこに海水を引き入れる。海水を引き入れる水路と塩田同士をつなぐ水路には微妙な傾斜が着いており、最初の区画から最後の区画まで、ゆっくりと海水が流れ、豊富な太陽光と乾いた風の力によって、各区画で少しずつ水分が蒸発されていく。最後の数区画では水分が十分に蒸発した状態になっており、ここで塩をすくう、というシステムだ。最後の数区画の塩田の、底から採れる塩はグロ・セル(粗塩)と呼ばれ、表面に薄く結晶する塩はフルール・ド・セル(塩の花)と呼ばれ、前者は調理に、後者は料理の仕上げに使われることが多い。
いずれの塩も、精製などはいっさい行われず、100%自然の状態。マグネシオム、カルシウム、鉄分、その他のオリゴ要素がたっぷり含まれた、風味豊かな味わいを持っている。
料理に欠かせない塩はパン作りにも必需品。生地に錬り込む他、整形後に表面にフルール・ド・セルを散らして焼いたバゲットなどもこの地方では見かける。また、この塩を使ったサブレやガレット、キャラメルも、ゲランド周辺の特産品だ。
チョコレートとの相性のよさはよく知られていて、塩入りタブレットなどもよく見かけるが、ミキュイの温かなガトーオショコラに、パラリとフルール・ド・セルを散らせば、ショコラの強い甘味を引き締める絶妙のアクセントになる。
ミネラルたっぷりで旨味あふれるゲランドの塩。料理やパン、お菓子作りに多用して、その美味しさをよりいっそう引き立てよう。